今、映画『サロゲート』を見たくなった理由

――この映画で重要な役割を果たすSFガジェット『サロゲート』が、もしも我々の世界の『今』、実用化されたとしたら?

 中共が拡散させた新型コロナウイルスのせいで、世界経済は未曾有の悪影響を受けている。
 新型コロナウイルスは飛沫感染ならびに飛沫との接触感染で容易に拡散するため、医療従事者、宅配業者、廃棄物収集・処理業者、ありとあらゆる種類の接客業従事者、等々……広範に渡る業種の従事者が生命の危険に曝されている。

 この様なゆゆしき状況を見て、ふと思った。

「もしも、昔あらすじだけ聞いた事が有る『サロゲート』(※)という題名の映画に出て来たSF的ガジェットが、実用化すれば良いのに」と。
(※原題は“Surrogates”。“surrogate”(サロゲート)の複数形。“surrogate”という単語は「代理人」「代用物」「遺言検認判事」等の意味を持つ)

 この映画『サロゲート』は、「サロゲート」と呼ばれる
『脳波で遠隔操作できるロボット』が実用化された近未来を
描き出す物語である。

(『シネマトゥデイ』チャンネルから引用)

 映画『サロゲート』の世界では、先述の「サロゲート」が「身代わりロボット」として使われている。
 操縦者は離れた距離にいるサロゲートをまるで自分の本来の肉体のごとく自在に操り、操縦者本人の安全を確保しつつ、サロゲートに危険な仕事を遂行させたり、サロゲートを通じてスリリングなレジャーを楽しんだりできる。

 サロゲートは、藤子・F・不二雄の漫画『パーマン』に出て来るコピーロボットに、あるいは荒木飛呂彦の漫画『ジョジョ』シリーズに出てくるスタンドに、似ているが相違点も有る。
 コピーロボットがコピー元から複製された自我を持ち、コピー元とコピーが頭部を接触させる事で経験を共有できるのに対し、サロゲートに自我は無く、あくまでも操縦者本人の自我に追従するだけである。
 また、スタンドの場合、受けたダメージが通常はスタンド使い本人にもフィードバックされてしまう。
 より近い例を挙げるなら、先述の『パーマン』と同じ作者の漫画『バケルくん』に出て来た変身人形こそ、サロゲートのコンセプトにより近いと言える。
(主人公が変身人形のスイッチを入れると、元々の本体が人形に化け、『魂』が変身人形に入り込み、変身人形の姿となって行動できる)

 もしも我々の世界の『今』にサロゲートが有れば、冒頭で言及した、医療従事者・宅配業者・廃棄物収集もしくは処理業者・ありとあらゆる種類の接客業従事者・等々……広範に渡る業種の従事者が新型コロナウイルスの脅威を退けて業務に専念できる事は、言うまでもない。

 そんな事が頭に浮かんだので、今まであらすじしか知らなかった映画『サロゲート』のDVDを近所のレンタルショップで借り、自宅で視聴した。
(これを機会にNetflixもしくはU-NEXTの会員登録をしようとも思ったが、今回は保留した。
 Netflixで一番安いプランは月額800円(税抜)。U-NEXTは月額1,990円(税抜)であるが、雑誌・マンガ・小説を読むための専用アプリで使えるポイントが毎月1,200円分付き、無料お試し期間も31日間有る。
 どちらもそこそこリーズナブルなのだが、映画視聴や読書以外にもやりたい事が色々有り、月額料に比して元が取れるほど時間を割けるかどうか分からなかったので、今回は保留した)

 さて、あらゆるシステムには弱点が生じ得るものだが、サロゲートを運用するシステムも例外ではなく、映画の中ではその弱点(※)とそれがもたらす危険を巡って物語が進む。

(※サロゲートの運用システムに限らず、何らかの情報処理システムにおいて存在が確認された弱点の事をIT業界では「脆弱性」(英:vulnerability)と呼ぶ。
 「脆弱性」と言うと何やら大仰に聞こえ、「弱点」と言い換えちゃ駄目なのか?という気がするが、英語の“vulnerability”の語源はラテン語の“vulnus”(「傷」を意味する名詞の主格単数形)に由来し、語源の大仰なニュアンスを保ちつつ日本語に訳すとしたら、やっぱり「脆弱性」としか訳しようが無いのだろう)

 以下、ネタバレを含むので、その部分だけ白く塗りつぶす。
 既に『サロゲート』を視聴した人でネタバレ部分を読んでみたいと思う方は、
反転表示して読んでいただきたい。

▼ネタバレ部分ここから▼
 サロゲートを開発しその市場シェアをほとんど独占したVSI社は、かつて米軍の依頼でサロゲートの電子回路を破壊した上に操縦席の安全装置を破壊して操縦者まで殺してしまう“O.D.”(Overdrive-Device;過負荷装置)を試作していた。
 試作品はやけにごつくて角ばった懐中電灯の様な形をしており、スイッチを入れると強力な電磁パルスによってサロゲートにコンピューターウイルスを送り込む。
 コンピューターウイルスによってサロゲートが破壊されるのはもちろん、詳しい原理は不明だが、操縦者の脳まで破壊される(たぶん、通常は脳を刺激して信号を送るだけの微弱な電磁波を、電子レンジレベルまでに引き上げるとか、そんな感じだろう)。
 O.D.の開発を依頼した米軍は、これまた詳細な理由は不明だが、実戦で使用した場合に生じる問題を解消困難と判断してか、実用化を見送り、試作品を破棄した。
 しかし1個だけ破棄を免れたO.D.が有った。そのO.D.を使い、VSI社はサロゲートの発明者であるキャンター博士を殺害しようとする。
 キャンター博士はかつてVSI社の会長であったが、サロゲートの運用方法を巡って他の重役と対立して袂を分かち、サロゲート反対派を密かに扇動していた。
 VSI社はそんなキャンター博士を邪魔者として抹消しようとしたが、間違って博士の息子を殺害。
 怒り狂った博士は、自ら開発したサロゲートを駆使してO.D.を奪取。その中のコンピューターウイルスを全世界に拡散させようとする。
▲ネタバレ部分ここまで▲

 個人的には、看過できない脆弱性が発生しうるとしても、今後サロゲートのようなシステムが実用化される流れが強まる気がしてならない。
 ――たとえ現在の新型コロナウイルス(正式略称:SARS-CoV-2)を根絶できたとしても、いつまた、同等かそれ以上に厄介な病原体が現れないとも限らないのだから。

 仮にサロゲートが近い将来実用化した場合、その市場シェアが独占ないしは寡占されるようであれば、映画で描写された様な危機を招きやすくなるだろう。

 どんな生物種であれ多様性を欠いた群れはたった1つの要因で絶滅しかねない。
 同様に、どんな便利なものであれ供給元(生産者)が1つしか無いと、その供給元に問題が起きた時あるいはその供給元が問題を起こした時、消費者は自衛する術も無く損害を被る。

 津波対策を怠って原発事故を招いた東電を思い起こせば、分かりやすいだろう。
 東電を嫌って他の電力事業者から電気を買おうにも、電力自由化が実施される以前では他の選択肢は無く、東電を増長させるばかりであった。

 独占・寡占に対しては、単に倫理的観点だけでなく、多くの局面で生産者に比べて弱い立場に在る消費者の不利益を防ぐという実利的観点からも、有効な抑止策が必要である。
 独占・寡占を抑止する必要については経済学の祖とされるアダム・スミスが既にその著作で言及している。
 それ以来、独占・寡占については、独占禁止法など様々な抑止策が講じられてきたが、その様な抑止策が万事において上手く行ったというわけでもない。
 抑止策の『脆弱性』を衝いて暴利を貪ろうとする輩は後を絶たない。

 もしも世界経済のシステムがもっとマシに成り得るものなら、少なくともそのシステムの脆弱性はもっとデバッグ(修正)されなければならない。
 ……非常に難しい問題であるが、これについて何か思い付いたら、折に触れて書いていくつもりである。

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