A. その可能性は充分有り得る。但しその場合、雇用者も被雇用者も諸共に、であろう。
今年(2019年)の『ブラック企業大賞』では、三菱電機(メルコセミコンダクタエンジニアリング)が、史上初めて2年連続で大賞に選ばれたとの事。
また、電通とセブン-イレブン・ジャパンが「特別賞」を同時受賞したとの事。
このニュースを知って、ふと、私はこう思った。
「AIはブラック企業を駆逐するか?」
――私の見解は冒頭の「A. 」の通りであるが、なぜそうなるか、かいつまんで話そうと思う。
あらゆる意味でAI(人工知能)の知的能力が人間の知的能力を上回るとされる
『技術的特異点』は、早ければ2045年に到来するとされる。
その数年前である2040年前後に、
『平均的な大学を卒業した人間に匹敵する知的能力と人間と見紛う容貌を持つヒューマノイド・ロボットが、1体当たり年額300万円ほどでリースされるようになる』
と、私は予想する。
人間のクイズ王にクイズ合戦で勝ち、
チェス・将棋・囲碁などで「機械が人間に勝つのはあと数年~数十年は無理」とされてきた常識をあっさり覆し、
人間の医師や薬剤師が精査不可能な莫大な情報の中からある種の白血病の治療法を見つけ出し、
金融市場では超高速売買で人間の相場師を上回る成果を出す事もしばしばという、
AIが今まで成して来た事を思えば、
先述の仕様を満たすヒューマノイド・ロボットが20年以内に現れても何の不思議も無い。
(むしろ、この予想を棄却するに足る根拠を見つける事の方が難しい)
標準的な人間一人を国公立大学卒業まで養育するのにおよそ3000万円を要し、大卒新人の年収は約300万円前後らしいが、それより低いコストで同等以上の能力を持ち、しかも不平不満を言う事も反抗する事も無い(と思われる)のであれば、いわゆるブラック企業が生身の人間を雇うわけが無い。
だが、雇用者側の地位も長く安泰であるかどうか、大いに疑問だ。
生身の人間とは違い、AIはソフトウェアのインストールによって人間より遥かに早くスキルを習得できると目される。
先述のヒューマノイドが管理職のスキルを充分習得した時、無能な生身の人間の管理職を雇う事は企業の利潤追求の妨げでしかない。
同様に、ヒューマノイドが経営のスキルを充分習得した時、無能な生身の人間が経営者で有り続ける事は企業の利潤追求の妨げでしかない。
投機・投資においても、先述の通り金融市場でAIが目覚ましい成果を上げつつある現実を見れば、遠からず、生身の人間の相場師や資本家は出る幕が無くなるだろう。
法務・財務・税務となると、尚更、生身の人間よりAIの方が有能になる日は遠くないだろう。
技術的特異点到来直前の僅かな期間(たぶん数年以上10年未満)、
先述の通りに中間管理・経営・投機・投資・法務・財務・税務……等々のスキル全てをインストールされたIQ(知能指数)100の人間に相当するAIと、単独~少数の人間との、タッグあるいはチームから成る、極めて小規模ながらも高収益な企業が乱立するかもしれない。
そして、それらの乱立する企業相手に、あるいは官公庁相手に、AIを提供する企業が世界で最も大きな影響力を持つに相違無いだろう。
何にせよ、AI開発競争激化の流れは止められない。
競争で遅れを取った者は、先んじた者に対し、著しく不利になる。
利得に聡い者がAIの開発と利用をやめるわけが無い。
「技術的特異点以後、生身の人間は経済主体の座から追い出されてしまうのではないか?」と、私は危惧している。
「そうなったら、AIがBI(ベーシックインカム;基礎所得保証)で面倒見てくれる」などという楽観的なシナリオを、私は信じる事ができない。
そのシナリオは、
「上に立つ者が聖人君子ばかりなら、共産主義は必ず上手く行く」などという戯言と、どの程度違うというのだろうか?