スピリタスとウォッカ

――今回は、他人には真似してもらいたくない用途で買った物のお話。

 新型コロナウイルスのせいで忌々しくあるいは痛ましく思う事柄が多過ぎるが、現在(2020年4月26日)から2ヶ月半ほど前の時点の日本では、まだ他国に比べて事態を楽観視する声が多かったように思える。

 かくいう私も、「100年前の悪性流感と同じ位の致死率になるかもしれない」とは危惧していたが、致死率はともかく、ここまで被害が広がるとは思っていなかった。
 特に、世界最高水準の感染症対策機関であるCDC(疾病対策センター)を擁するアメリカですら感染爆発を未然に防げなかった事は衝撃的だった。

 この2ヶ月半ほどの間、一部の物品の入手困難な状態が続き、実に忌々しく思っている。
 入手困難な物品の筆頭はもちろん、マスク。
 マスクよりは若干マシな状態とは言え、手作りマスクの材料として需要が急騰したガーゼも、相当な品薄。それと同じくらい品薄な物が、皮膚等消毒用のアルコール。

 実を言うと、今年2月下旬の時点で
「普段使っている消毒用アルコールが少々こころもとなくなってきたから、スピリタスかウォッカでも買ってきて、きれいな水でちょうど良い濃度にして使おう」などと画策し、
 自分の近所の酒屋やドラッグストア十数店舗を探し回ったのだが、目当ての品がことごとく売り切れていた。
 ――私と同じ事を考えた人は、他にも多くいたらしい。

 仕方が無いので、まずは「特に品薄のスピリタスも、もしかしたら予約したら枠を確保できるかも」と言ってくれた酒屋さんにスピリタスを予約注文し、スピリタスを確保できるのを待つ間、アルコール度数50のウォッカを買ってみた。
(その当時、その店の店頭に有る『アルコールと水分以外の成分をほとんど含まない蒸留酒』の中で、一番アルコール度数が高い物がそのウォッカだった)

 で、紺色のラベルが貼られている未開封の瓶の写真が、私が買ったアルコール度数50のウォッカ。
 ほんの数ccだけストレートで味見をしてみたが、ほんと、『アルコールと水分だけ』な感じだった。
 アルコール以外の味や香りを期待していると肩透かしを食った様な気分になるが、逆に雑味の無さを味わいたい時には良いかもしれない、とも思った。

 手の平に少し取ってみた感触も、普段使っている皮膚等消毒用アルコールとほとんど変わらない。
 さっそく、いつも使っているアルコール用スプレー容器に入れ、使ってみた。
――特に不都合は感じなかった。
私の身の回りに関する限り、充分に代用になっている。

 そして待つ事約1ヶ月半。ついにスピリタスを入手できた。

 既に先述のウォッカを入れていたアルコール用スプレー容器に、
〔ウォッカ:スピリタス〕=〔1:1〕の比率になるように、
スピリタスを注ぎ込んで混合した。
 スピリタスのアルコール度数は96なので、
これでアルコール度数約73(※)の消毒液ができた計算になる。
 実際、使用感は普段使っていた皮膚等消毒用アルコールへ更に近付いた。

(※アルコール度数は「体積%(vol%)」で測った数値であり、
「アルコールと水の混合液100mlのうち何mlがアルコールか」を意味する。
 水とアルコールは混合すると体積が若干減る性質が有るので、
 計算に当たって下記の参考資料を利用した)

▽参考資料▽
『エタノール水溶液の容量%と比重および重量%との関係』
(一般社団法人アルコール協会)

 消毒液として最も高い効果を得られるアルコール度数は「70~83(vol%)」。
一応、『感染症法に基づく消毒・滅菌の手引き』(厚生労働省健康局結核感染症課)の記載に従えば、薬局で販売される消毒用エタノールと同等の効果が有ると言える。
(因みに、新型コロナウイルスはアルコール消毒が有効なタイプである)

 かくして、私は普段使っていた消毒用アルコールの代替物を手に入れたわけだが、私と同じ入手方法を、他人にはあまりおすすめしない。
と言うのは、スピリタスはあまりのアルコール度数の強さゆえ、火気に関してガソリンと同等の危険物扱いをされている代物だからだ。

 スピリタスから揮発したアルコールが充満した所で静電気の火花が散ったりしたら、ドカンといきかねない。
 私は煙草を吸わないが、喫煙者が煙草をふかしながらスピリタスの瓶を開けるなど、もってのほかである。

▽参考資料▽
『世界最強のお酒は火気厳禁!』(神戸市消防局)

 最近(令和2年4月10日)、厚生労働省は消毒用アルコールの不足を憂慮して、
『やむを得ない場合に限り』、アルコール以外には水しか含まれていないようなアルコール度数の高い酒を消毒用アルコールの代用として使う事を容認した。

 これを受け、酒造業者が『消毒用アルコールとしても使える酒類』を販売する様になった。
 このような品は、私がやったようにわざわざ自分で混合する必要が無いので、
消毒用アルコールの代替品をお求めの人には、こちらもしくはこちらをおすすめしたい。

(平常時に薬局で買えるはずの消毒用アルコールと比べると割高だが、『酒』として販売する以上、酒税法をクリアしなければならないので、致し方無い。
 消毒用アルコールは飲用に適さない添加物を入れてあるため、飲用に供する『酒』と見なされず、酒税の対象外となる)

 マスクの件で転売ヤーが問題視されているが、上述の『消毒用アルコールとしても使える酒類』でも、1本辺り10万円以上の法外な価格を付けている転売ヤーがいる模様。
 そんな転売ヤーには是非とも酒税法違反で罰則をくらってもらいたい。

 それはさておき、今回の話で取り上げたスピリタスはまだ残っており、冷蔵庫に保管してある。
 ゴールデンウィーク中に、もう少しだけ飲んでみる予定。

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